脳はとても優れた愚かな装置

人間の脳は驚くほどの知能を備えていますが、一方で一度に大量の情報を処理することが苦手です。入ってくる情報が多いと、今一番重要な(今一番関心がある)ことにだけ注意を振り向けます。歩きスマホで言えば、スマホに夢中になって、踏切の警報が聞こえなくなったり、聞こえても危険を告げる合図だと認識するところまで至らないわけです。

これは人材開発でも重要なポイントです。

前述の脳のしくみを部下を育成する上司の視点で置き換えると、上司が部下にコーチングやフィードバックをするとき、上司は部下について、自分の見たいこと聞きたいことしか見ていないし聞いていないということです。(研修の中でこれを体験してみると、全員があきれて笑い出してしまうほど、私たちが見ていない/聞いていないことがわかります。)

だからこそ、上司は見て/聞いていないことを真面目に受け止めることが重要です。そうして初めて、部下と対話する姿勢や考え方を学ぶスタート地点に立てます。また上司が自分の思考のかたよりに気づき、適切な判断能力を備えるためには、どれほど優秀なパフォーマーや上司であっても、人間の脳のしくみに由来する盲点を具体的に知り、自分の思考の死角を洗い出す思考法の訓練が役立ちます。