イノベーションやエンゲージメントをむしばむマインドセット

「エンゲージメント」が上がらない大きな原因も、「イノベーション」が遅い原因も、固定マインドかもしれません。

マインドセットとは固定されたもののみかたや考え方のことです。

スタンフォード大学の心理学教授であるキャロル・ドウェック博士が同名の書籍を出版したのは2000年代の中ごろでした。大分遅れましたがその後日本でも同名の翻訳書が出版されるなどしています。博士の研究活動はどんどん広がったので、簡単に説明できるものではありませんが、誤解を恐れずにかいつまんで言うとこうなります。

※TED等にも何度も登壇している方ですので、詳しく知りたい方はCarol Dweckで検索してください。

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Growth Mindset、すなわち人の能力は生まれたときから限界が決まっているわけではなく、能力とは「努力」や「正しいやり方」や「他者の導き」を通して成長・開発できるものだとする“成長マインド”を持つ人は、モチベーションが高く、失敗しても「能力が足りないからだ」と考えてあきらめたりしない。失敗したら正面から向き合って考える。その時その人の脳は次の挑戦に向けて準備をしていて、脳神経(ニューロン)レベルでは神経細胞の強固な接続が形成されている。すなわち新しい学びが進行する。成長マインドを持つ人にとって失敗はネガティブなものではない。従ってこの人々は失敗を恐れずに高い目標にチャレンジする。

Fixed Mindset、すなわち人の能力は生まれたときから限界が決まっていて、能力は固定されたものだとする“固定マインド”を持つ人は、失敗や困難を恐れる。なぜなら失敗と難しさは、自分の能力が足りないことを意味するからである。失敗したときには自分より能力の低い人を探したり、失敗しないように目標を低くすることで、自分に能力があることを証明しようとする。失敗したときは失敗と向き合うことなく避けてやり過ごす。その時、脳内には何の活動も起きないので、新しい学びを得ることはない。

フォーチュン500の企業の社員に、自分の会社が成長マインドと固定マインドのどちらの傾向が強いかと尋ねると、皆、瞬時に答えることができる。成長マインドの企業では若手社員も信頼され、任されていると感じていて、クリエイティブかつイノベーティブであるのに対し、固定マインドの企業では若手が育たない。

親が成長マインドなら子供が自動的に成長マインドを受け継ぐわけではない。うまくできたとき、何かを達成したときに「すごいね、能力があるね」と褒められると、「能力があるから達成できたのだ」という刷り込みが起こり、それによって徐々に固定マインドが醸成され、チャレンジを避けるようになる。努力や工夫や辛抱強さに目を向けて褒めるようにしないと、成長マインドは醸成されない。

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博士の研究は大人から子供まで、世界のさまざまな組織や国に及んでいます。研究結果が示唆することは、例えば「エンゲージメント」が上がらない大きな原因が、「固定マインドを助長する社内風土」かもしれないということです。同じく「イノベーション」が遅い原因も、固定マインドかもしれないわけです。また上司によるフィードバックや1オン1では、小さな言葉遣いに対しても配慮が必要だと教えてくれます。

余談ながら、人の行動は目に見えない多くの、気づきにくい要因の影響を受けるため、エンゲージメントやイノベーションやダイバーシティやSDGs推進と一口に言っても、どの組織にも現状を生み出している固有の根本的な要因が存在します。その固有の根本原因にアプローチすることが大切ですので、解決策を選定する前に、「なぜ現状がこうなのか?」の問いを何度も繰り返して、根本原因を明らかにしておく必要があります。

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