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日本と海外における人材開発や研修の違い 4.戦略的人事と研修効果

研修効果の事例報告が、海外には案外多い

海外では、事業目標を達成するには新たな能力が必要だという理由から実施される研修が、少なからず存在するのに対して、日本では一律の基準値をクリアするためのものが多いと、前号で書きました。このことは、研修効果をどう捕捉するか、できるのか、なぜ海外では「受講者が研修に満足したか、知識が増えたか」にとどまらず、「経営にとってプラスになったか」に踏み込んだ効果測定の事例が、日本よりはるかに多いのかに関連しています。

まず研修効果を測定するために、どんな作業が必要か考えてみます。ここでは特にレベル3~4、5を想定して考えてみます。

研修効果を左右するもの

研修効果は、講師や内容の良し悪し以外に、多くの要因に影響されます。内容は受講者自身が感じるニーズにマッチしていたか、内容と受講者のレベルはマッチしていたか、(難しいフィードバックの研修を新卒の新人に対して行っても、重要さが理解されないかもしれません。)受講前の案内は適切だったのか(事前の準備がうまくできないと、研修中に納得のいく結果が得られないかもしれません。)、会場は快適で学習に集中できたのか、学習の妨げになる出来事や気がかりはなかったか、受講者は問題意識を持っていたか。受講者は学習内容を実践したか。受講者の実践を妨害するような人や制度はなかったか、等々。

研修効果は、薬の効果と似ています。薬の効果も、多くの要因に左右されます。投薬量やタイミングの正しさ、病気に対して適切な薬が選択されていたか、症状の重さに照らして適切な薬だったか、症状が改善しているタイミングだったか、悪化のタイミングだったか、患者はきちんと薬を飲んだか、医師の指示を守ったか、等々。

外部因子に左右されずに研修効果を測定するには

たくさんの因子によって効果測定の結果がぶれるのを避けるため、薬の効果測定では条件がほぼ同じ患者グループを二つ作って、一方には投薬し、一方には投薬をしません。そして、熱が下がったか、痛みがとれたかなど、病気の改善を示す数字を比較します。

経営の観点から客観的に研修効果を調べるときも、同じ作業が必要です。もしも営業研修の効果を測定しているときに一つのグループの誰かが欠席したら、それと同じ日数、もう一つのグループのメンバーも休ませなくてはなりません。加えて、熱や痛みにあたるもの、すなわち、効果の有無を判断する数字ー指標となるものーも必要です。

では、たとえば自分の部署のメンバーが消極的で会議で発言しないので、活性化のためにファシリテーション研修をするとします。この場合、ファシリテーション力の向上を確認するには、何を測定するのがいいでしょうか。会議中の発言数をカウントするだけでは、その日はたまたま楽しい話題だったとか、気の合うメンバーがそろったなどの偶然に左右されて、発言数の多さが研修の効果だったのかはっきりしません。

戦略的人事―海外の研修では日本と比べて効果測定しやすい理由

戦略的人事の観点から研修がビジネスの目標に論理的に連結していれば、結果(追いかけているビジネスの結果)と原因(研修)の因果関係が分析され、明白になっていますから、ビジネスの結果の数字を用いることになります。一方日本の一般的な研修では、それによってどんな事業成果を得たいのか、同じ成果を得られるもっとインパクトの大きな方法はないのか、などが必ずしも明確にされていないことがよくあります。それが良いとか悪いというよりも、前号で触れたと通り、これまでは研修の位置づけが海外とは違っていたということです。特定の研修と経営からみたプラス効果の因果関係が明らかでないので、ビジネス上の成果を捕捉することが困難になります。

したがって戦略的人事の考え方が長年浸透している海外の研修では、研修効果を数字で示した事例がよく見られるのに対して、日本ではそのような試み自体が少なくなってしまいます。今後、戦略的人事の考え方が浸透するのと同時に、日本でも研修効果を経営レベルで数値化する試みが登場するかもしれません。