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「好きこそものの上手なれ」は、業務にあてはまるか

ひたむきな努力が必要な活動は、好きでなければ続かない

自分が好きなことは、情熱をもってひたむきに打ち込むので上手になる・・・とは、誰が言い始めたことわざかわかりませんが、たしかに一理あると感じる人が多いのではないでしょうか。たとえそれが犯罪行為などの社会的に許容されないような手技であるとしても、熟練に長年の努力を要する能力は、そもそも好きでなければ練習が続かないと、私たちの直感が告げます。

トップレベルとそうでない人々の違いは、遺伝よりも練習量

それに拍車をかけるように、能力開発の分野で近年世界的に着目されてきた学説は、トップレベルのアスリートや棋士、芸術家から、プログラマーに至るまで、およそありとあらゆる分野のトップとそうでない人々を隔てている違いは、練習時間と練習方法の違いでしかないと結論づけています。遺伝的にとくに違う証拠は見当たらないというのです。この主張は様々な分野における世界の超一流の人々と、〝超“はつかないが一流の人々、それに一般的な人々についての科学調査に基づいてなされています。

職場での能力開発テーマは、好き嫌いを意識して選ぶべき

では「好きこそものの上手なれ」を、業務パフォーマンスにもあてはめるとどうなるのでしょうか。

たとえばプレゼンテーションが好きな人は、優れたプレゼンターである確率が高いのでしょうか。巧みなコミュニケーションで人を巻き込み、影響力を発揮することが好きな人は、それが上手なのでしょうか。戦略的に考えることが好きな人は、戦略的に優れている可能性が高いのでしょうか。

弊社提携先のゼンガー・フォークマン社は、この点を世界のビジネスパーソンの100万件のデータをもとにして調査しました。それによってあらためて、「誠実であり正直であること」や「力強く明快にコミュニケーションすること」、「他者を動機づけること」や「業務や専門について十分な知識を持っていること」など、良いパフォーマンスを実現するために重要だと考えられる能力の場合でも、それを好きだと感じている人は、総じてその能力が高いことが証明されました。

好きなことが、上手なことだとは限らない  

このデータから考えさせられることが、いくつかあります。一つは、データ以前の問題なのですが、そもそも長いキャリアにおいて、継続的に自分の能力を伸ばす努力を続ける人はとても少ないということです。(この点を確かめたいとお考えでしたら、自分の周りにいる人々で、常に目標を持って業務に関わる能力を高めるべく努力している人を思い浮かべてください。たいていの場合、全体の1割にも満たないはずです。)

もう一つは、企業や管理者にとっては、能力開発の努力を全くしない社員と比べたら、自分の好きなことでいいから能力開発の努力を続けている社員のほうが、はるかに望ましいということです。

むろん、「好きなこと」と「上手にできること」が統計的に相関しているとは言っても、好きであれば上手だという保証はありません。極端な場合「後輩を育成するのが大好き」だと自称する人が、周囲から指導が下手だと思われていたり、「プレゼンテーションが大好き」だと自称する人のプレゼンが、皆をしらけさせているといった例は、よくあるものです。

ひたむきな努力が必要なものは、好きでなければ続かない

先人の知恵と科学調査の結果が示唆するのは、好きであること≠上手であること。だとしても、継続的な実践や練習が必要な能力開発は、“可能な限り”本人がやりたいことを優先すべき、ということになります。

“可能な限り”の意味合いは、組織での能力開発はあくまでも本人や組織の業務パフォーマンスを向上させることが目的だからです。そのためには、企業や管理者からみて必要性が感じられることと、現状の何かの能力が許容レベルを下回っている場合には、本人の好き嫌いを問わず、その改善を最優先するべきときがあるからです。