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あなたの上司にリーダーシップ開発は必要か

今回は弊社のパートナー、ゼンガー・フォークマン社の創業者ジョー・フォークマン博士の論文をご紹介します。フォークマン博士は計数心理学の専門家として、世界初の360度調査を開発したチームの一員でした。スタンフォード・ビジネススクールでかつて教え、経営者としてもビジネスに造詣の深いのジャック・ゼンガー博士とともに、科学的な裏付けに基づいたリーダーシップ開発を提唱し、多岐にわたる企業のリーダー育成に携わっています。

 

ジョー・フォークマン博士の論文

マネジャーたちが一定の階層に到達したら、それ以上は研修など不要だと考える組織がある。顧客と人材開発の話をしているとき、往々にしてそのような企業のトップ・エグゼクティブから、「わが社の社員には課題があるので、能力を伸ばして欲しい」と依頼される。

その反対にトップ・エグゼクティブが先頭に立って研修を体験し、身を持って模範を示そうとする企業もある。両者の違いは特筆すべき違いを生み出すのかどうか、調査することにした。

トップから組織のボトムに向かって、スコアは右下がり

結果は、なかなか痛烈な示唆に富むものとなった。データによれば、あなたのリーダーシップ・スコアが、あなたの上司のリーダーシップ・スコアを上回ることはあまりない。11954人のリーダーやマネジャーを対象とする調査で、リーダーシップの良し悪しをグラフにした折れ線は、トップ層から新人層に向かって次第に下がることが確認された。言うなればリーダーシップの良し悪しについて、シニア層が天井を作っているのだ。下のグラフの青い線は、複数の企業におけるトップ層、中間層、下層のリーダーシップ・スコアの平均点を示している。グラフが右下がりになる傾向は、どこの企業で調査しても一貫している。その原因の一つは容易に想像ができる。企業が優秀な人を昇進させる結果、スコアの低い人が下の層に滞留するのである。

ところで、このパターンから外れている企業も見つかった。赤の折れ線は調査した7社の中の1社だが、トップ層の平均スコアが57*パーセンタイルで、平均を大きく下回っている。ミドル層も44パーセンタイルしかない。平均値は58パーセンタイルであるにもかかわらず、である。トップ層のリーダーシップが他社に比べて見劣りしていると、中間層やボトム層はさらに見劣りするという結果だ。

*パーセンタイルは、数値が小さいほうから順番に並べて、何位に位置するかを1から100で示す数字。100人の中で10パーセンタイルなら、数値の小さい方から数えて10位であることを表す。同じく90パーセンタイルなら数値の小さい方から数えて90位になる。

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上司の出来・不出来は部下の出来・不出来を左右する

さらに詳しく調べてみよう。今度は256人のリーダーと直属の部下のスコアの関係を調べることにする。まず上司と部下の双方に、同僚たちによる360度調査を受けてもらった。その関係を示しているのが次のグラフだ。上司のリーダーシップ・スコアが、下から10%に入るほど低い場合、部下のスコアは29パーセンタイルと低くなっている。逆に上位10パーセントに入るリーダーでは、部下のスコアは75パーセンタイルと、高くなる。自分がリーダーや管理者として優秀か否かは、下位者に極めて大きな影響を及ぼしているのである。

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上位者がすべきこと

上司も部下と同じ研修に参加すべきだなどと言うつもりはない。しかし上司としてやるべき重要なことがある。部下が研修に参加する前に面談する時間をとり、部下が目指すゴールを知ること、同時に上司として部下に学んでもらいたいことを伝えるのである。研修が終わったら再び面談して、研修に参加してみて部下のゴールを再び確認する。そのうえで、そして能力を伸ばすための時間を十分に与えることと、部下の学びや気づきを他者と共有するように背中を押すことが欠かせない。

リーダーや管理者の影響は、少しずつ長い時間をかけて効果を及ぼす。そのため、「自分が部下に及ぼす影響など微々たるものだ」と主張するリーダーもいる。この調査結果が、リーダーの影響は、自分でも予想できないほど大きいのだと気づくきっかけになれは幸いである。影響は、一つ下だけでなく、さらに下の階層にも及ぶ。

優れたパフォーマンスは伝染しやすい。同様に見劣りするパフォーマンスも伝染しやすい。「上位者には研修は要らない…」という思いが再び心によぎったときは、立ち止まって「優れたリーダーシップ(はたまた見劣りリーダーシップ)はトップから始まる」ことを思い出したいものである。